『正法眼蔵』「道心」(10) 第103号
 また、この生のうちに、法華経つくりたてまつるべし。
 かきもし、摺写(しょうしゃ)もしたてまつりて、たもちたてまつるべし。
つねにいただき、礼拝したてまつり、華、香、みあかし、
飲食(おんじき)、衣服(えふく)もまゐらすべし。つねにいただきよくして、い
ただきまゐらすべし。

〔訳〕
また、生涯のうちに、法華経をつくりたてまつりなさい。
「法華経」を書写したり、印刷したりして、大切にしなさい。
つねに、丁重にいただき、礼拝したてまつり、お華、お香、お灯明、
飲もの、食べもの、衣服などをおそなえしなさい。
いつも、頂上をきよらかにして、いただきまいらすものである。

 この本文のところも〔訳〕によって、おおよその意味が分ります。
要するに、道元禅師は、「法華経」をいただき、ご供養しなさいと
しるしておられます。
 道元禅師は、諸経のなかで「法華経」をたいへん尊重しておられます。
「法華経」のなかの一句、「法華経」のおしえを、しばしばとりあげて
説法をしておられます。「諸経の王」だとまでしるしておられます。

 ただし、道元禅師にとって、「法華経」は、仏法のなかの「法華経」であります。
「法華経」のなかの仏法ではありません。


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