大村智氏・ノーベル賞 112号
大乘寺山主 東 鱆チ

 北里大学特別栄誉教授に、2015年のノーベル医学生理学賞が贈られました。「エバー・メクチン」を見つけ、アフリカなど3億人以上の人々を、失明の危険性のある病気から救った業績によるということです(「北陸中日新聞」2015年10月六日付朝刊)。
 「自分の研究人生を振り返り、めちゃくちゃ本を読んだ。全体の流れをいつもつかんで研究を進めた。苦学はしたが、スキーの長距離よりは楽と思っていた」。
 「人のまねをしたら、それを超えることができない。私は学生時代から人まねはしなかった」。
 「自分は人の二倍も三倍も失敗している。失敗を繰り返してもやりたいことをやりなさい」。(同上)
 大村教授のおことばです。実にすばらしいと、ほんとうに感銘を深くしました。
 過ぐる7月、8月、9月ごろ、2020年東京五輪・パラリンピックのエンブレムのデザイナー佐野研二郎さんの盗作問題うんぬんの一件で、日本中のテレビ、新聞、雑誌が大さわぎをしていました。
 私も、過去約40年間、専門分野の研究をまっ暗闇をいのちがけでひた走ってきただけに、いま、複雑なおもいが胸中を去来します。
 「人のまねをしたら、それを超えることができない」。
 世の中には、人の真似すら出来ない連中も大勢いるのです。
 しかし、佐野さんに関していえば、いま、出なおして、あらためて、自分の世界に向かって下さい、坐禅をしてみて下さい、と激励したいのです。


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