「お経もバイブルもいらない」 126号
 最近、ある雑誌に、渡部昇一さんと曽野綾子さんとの対談が出ていました。お二人ともクリスチャンです。
渡部さんによれば、むかし国際基督教大学の学長であった中川秀恭氏が、
 「この年(百歳)にもなったらキリストのそばへ行くとか、神様のそばへ行くとか、そんなことを考えなくてもいい。ただ虚空に消えるだけです」と言われたそうです。渡部さん、いわく。「プロテスタントのトップの方がそう悟っておられたんですね」。また、いわく「僕は何人もの長寿の方からお話を伺いましたが、信仰熱心だった方でもお経もバイブルもいらないといった達観を語っていましたよ」。
 これに対して、曽野さんいわく。「神様でも仏様でも、私に、「もういいよ」とおっしゃる日までは命をお預けしようと思っています」。
 お三方のおことばは、長い信仰生活から出た人生悟達、大安心の境地といってよいでしょうか。
 ひとによって、立場や、考えはことなりますから、うけとり方もさまざまでしょうが、究極の境涯は、宗教のちがいを越えて、万里同風の世界に出るのでしょうか。
 十代のすえに僧侶となってからおよそ六十年あまり、仏教の修行と学問を求めつづけているいま、私は、仏さまにまもられている、救われている、そして、ひとびとのために生かさせていただきたい、そんな祈りの毎日です。

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