イタリアの禅 第32号
 先日、イタリアのフィレンツェに出かけてまいりました。
 フィレンツェには、イタリア人女性のお弟子さんがいて、三、四十名の同志とともに、坐禅会を開いています。大乘寺イタリア別院真如寺です。
 私は、マツシマ先生の通訳を介して、『正法眼蔵坐禅儀』を現代語訳し、説明しました。
 また、四名のかたがたにお授戒(仏教徒としての生活のきまりを授けること)をおこないました。
 聞くところによると、イタリア北部だけでも百か所をこえる禅センターがあるそうです。
 イタリア仏教は、一定の知的水準の人びとにうけ入れられている禅などと、オカルト的狂信者集団として見られている仏教徒がいるそうです。
 イタリアは、カトリックの本拠地であり、フィレンツェは、美術、工芸のさかんな歴史と伝統の古都です。
 日本の京都か金沢に相当するすばらしいところです。
 そして、日本人にとても好意的です。「君たちは、日本人か。なに、ブッデイズモか。ニッポン、バイザイ」と叫んだ老人もいました。
 仏教、禅に興味、関心を抱く人びとが増えているのは、どのような背景、事情によるのでしょうか。
 いずれにせよ、仏教、禅の中心地は、二、三十年後に、アメリカ、ヨーロッパに移りかわって行くのではないでしょうか。
 もっとも、イタリアには、仏教、禅だけではなく、茶道、華道、柔道、剣道、合気道なども盛んになりつつあります。
 日本の文化、伝統が諸外国の人びとにうけ入れられることは楽しいことですが、もし、一方で、日本がもぬけのからになってしまうとなると、少し悲しい感じもいたします。






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