静かな安らぎ 第47号
 能力がとぼしい。意欲が弱い。将来は不安だらけ。
 家庭や学校、会社などのなかでのさまざまな問題に当惑し、悩む。
 また、人のうらやむ家庭に生れ、明噺な頭脳や強い体をもち、
 社会生活、職場の環境にめぐまれているような人でも、実は、その内面は、いろいろな問題をかかえていて、につちもさっちもいかなくなっている。それを表面ではとりつくろって世渡りしている。そんなことも意外に多いのです。
 前者と後者とでは、事情が異なり、対応策もまた違ってくるとは思いますが、苦しみ悩むという点では、共通点がありましょう。
 大乗寺の境内には、庭園らしい庭園はありません。
 貧乏寺ですから、そんなものをつくる経済力はないのです。一年に一度か二度、永年出入りの業者さんにお願いしてほんの少し手入れをします。
 しかし、すみずみまで、舐めたようにきれいにお掃除したり、それから、木木の枝を、まるで盆栽のように一分の隙もなく前刀定していただいてはおりません。
 出来るだけ、自然のまま、ありのままの状態にしてもらつています。
 そのせいかどうか、大乗寺の境内にお入り一になったお方は、ほつとされます。
 ひとのこころは、ときにいためつけられたり、疲れはてたり、思案にあまることなど、いろいろあります。
 そのようなこころを、黙って抱き込み、うけ入れて、やわらげる雰囲気があって、こころを安らかにし、静かにして、生きる勇気を与えてくれるのでしょう。
 私にもよくわかる気がいたします。

戻る