『正法眼蔵』「道心」の巻(2) 第76号
 いったい、この私はなんなのだ、どうすればいいのか。悶々として、いろんなことに、
手あたり次第に、目を向けます。本を読みます。両親、学校の先生などにたずねます。
 私の場合は、ついに、家を出て、しかるべき人を求めて、放浪の旅に出るのです。
 さまざまな人に出会うのですが、どんな人がいいのか、はじめのころは、まったくわかりません。
親切な人を立派な人と思いこむことがあります。有名な人がいい先生だと鵜呑みにして
しまうこともあります。しかし、一部の人にしか知られていない人で、すばらしい人もあります。
 私が、十代で触れることが出来た人は、大網信照上人、椎尾弁匡大僧正、渡辺頼応老師、
伊福部隆彦翁、沢木興道老師、渡辺玄宗禅師、師兄の板橋興宗のちには総持寺の禅師さまなどなどを、
まず挙げておかなければならないでしょう。また、二十代にお会いして大恩を蒙ったかたがたは、
別の機会に触れたいとおもいます。
 どのお方も、どのお方も、ほんとうにすばらしい、すごい人でありました。百年、二百年にポッンと
世に出てくるようなお方というべきでしょう。
このようなお方にお会い出来たことは、私の生涯の宝であります。
 私が存じあげているこれらのかたがたのエピソードをご紹介したいのですが、
いまは、その余裕がないのは残念です。

戻る