「いろはにほへと」 第14号
 「いろはにほへと」をご存知でしょう。
あれは、実は、次のような歌で、むかしから「いろは歌」とよばれます。

  色は匂へど 散りぬるを
  我が世 誰ぞ 常ならむ
  有為の奥山 今日越えて
  浅き夢見し 酔ひもせず

「いろは歌」の意味は、こんなことになるでしょう。

  美しく咲いている花も、やがて散ってしまう。
  この世で、誰か、永遠であるものがあろうか。
  悩み苦しみの山坂をいくつも越えてきた今、
  うたかたの夢に、もう酔い痴れることもない。

この「いろは歌」は、平安時代、弘法大師空海(774-835)がつくったといわれます。しかし、国語学者のなかには、異説をとなえる人もいます。
平仮名で、しかも同じ字をくりかえして使うこともなく、深遠な意味をもりこんだ「いろは歌」を、誰がつくったというのでしょう。かりに弘法大師でなければ、大師と肩をならべる超一級の大人物でしょう。
私たち日本人は、弘法大師の名前も、またどんな人物かも知らなくても、あるいは仏教に関係のない人でも「いろは歌」は知っています。平仮名は、毎日、読んだり書いたりしています。
いや、平仮名を使わないで過ごすことは、一日たりとも出来ません。
 そして、知らず、知らずのうちに、仏教のなにかを吸収しているといえましょう。



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