大乘寺ご開山のことども(5) 第53号
 ご開山は、お師匠さまの道元禅師がご遷化になられて六年、永平寺第二代の懐奘禅師さまに命じられて、中国へお出かけになりました。正元元年(一二五九)から弘長二年(一二六八)のあしかけ四年間です。
 懐奘禅師は、中国諸方の代表的な禅寺をたずねて、その結構や規矩を記録してくれと命じられました。そして、永平寺を再興せよと命じられました。かつて道元禅師が創めた京都の興聖寺が火災をうけて、記録が一切無くなってしまったからであります。
 そのご開山の調査報告が『五山十刹図』上下二巻であります。
 これにもとづいて永平寺では、山門を建て二つの廊下をつくり、五体の尊像を安置し、一年に四回の礼儀そのほかを定めたのであります。ご開山は、「永平中興」とよばれました。
 『五山十刹図』は、明治四四年、国宝に指定されましたが、昭和二五年、重要文化財となっておりました。この『五山十剃図』は、大乗寺では、いわゆる道元禅師の『一夜碧巌』とならんでもっとも尊い寺宝です。
 その後、『五山十刹図』の用紙は中国紙であり、しるされている筆蹟は宋代の中国人のものであると、その方面の専門家から私は聞かされました。
 やはり、重文というより、国宝としてうけとめるのがふさわしいとおもわれます。
 先年、私は、『五山十刹図』の複製をたずさえて中国にわたり、関係寺院を歴訪しました。しかし、いまは、なんの手がかりもありませんでした。
 先般、中国漸江省の太白山天童寺のご住職一行がご来山になりましたので、ご覧にいれました。たいそう興味深いご様子でした。

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